研究概要 |
本研究では、toll like receptor (TLR)を介する自然免疫がベーチェット病をはじめとした自己免疫病態にどのような役割を担うかを解明することを主目的とし、ベーチェット病の病態における自然免疫系の関与を改めて検討した。また、自然免疫系の炎症制御に作用することが知られているheme oxygenase (HO)-1の病態への関与も検討した。その結果の概要は以下のとおりである。 1)重症ブドウ膜炎を有するベーチェット病患者にキメラ型抗腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor : TNF)-αモノクローナル抗体治療中に末梢血単核細胞によるサイトカイン産生を解析し、本治療の作用機序には循環中TNF-αを中和のみならず、TNF-α産生細胞の機能抑制が関与すること、その抑制の程度と治療効果が相関することを見出した(Misumi M, Takeno M, et al.Cytokine 24(5):210,2003)。 2)ベーチェット病、特に眼症状、特殊病型を有する患者ではNK細胞のkiller inhibitory receptor (KIR)の発現異常がみられ、特定のKIRを有する細胞頻度が選択的に増加または減少しており、NK細胞の病態への関与が示唆された(Takeno M, et al.Rheumatol Int,(in press))。 3)健常者末梢血単核細胞より分離した単球および単球細胞株THP-1を熱ショック蛋白(heat shock protein ; HSP)65kDで刺激するとTNF-α産生が誘導されるがその産生はTLR4に対する中和抗体により部分的に抑制された。 4)ベーチェット病患者の末梢血単核細胞、多核白血球におけるTLR2,4,9の発現をreal time PCR法により半定量的に解析した結果、これらの発現には特に異常を認めなかった。 5)抗炎症作用を有するHO-1の発現は、マクロファージ活性化症候群といわれる成人スティル病、血球貪食症候群などの単球でその発現が増強し、ベーチェット病では多核白血球(好中球)において増強していた。その意義について、さらに検討中である。
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