研究概要 |
肝炎ウイルス感染から肝癌への進展には著しい個人差があり,それにはウイルス側・宿主側の両因子が関与している.本研究では,肝炎ウイルス変異の解析と共に,宿主側因子,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子の調節領域に存在するSNPの解析により,肝病態進展,特に肝発癌リスクの個人差を解明し,実際の治療に貢献することを目的としている.本研究の実績として,1)インフォームドコンセントが得られたB型およびC型肝炎患者白血球DNAサンプルを約1,000名分収集し,臨床データなどを含むSNP解析用データベースを構築し,約500名分を匿名化処理した.また,新たな匿名化処理方法についても考案した.2)B型肝癌患者におけるB型肝炎ウイルス塩基配列,特にHBx遺伝子の塩基配列につき解析した結果,日本人に最も多いゲノタイプCにおいて,HBxのコドン38のアミノ酸置換が肝癌と有意に関連していることを見出した.3)のべ約40症例のC型肝炎ウイルスコア遺伝子塩基配列を決定し,インターフェロン治療例において,コア蛋白のC端側のアミノ酸置換がNF-κBを介したインターロイキン8プロモーターの活性化能を変化させ,肝炎の活動度を規定することを明らかにした.4)C型肝炎ウイルスコア蛋白,B型肝炎ウイルスX蛋白,デルタ型肝炎ウイルスLHDAgが宿主である肝細胞,特にシグナル伝達機構に及ぼす影響を明らかにした.5)280症例のC型肝炎患者につき,サイトカイン,代謝酵素遺伝子多型につき解析し,インターロイキン1β遺伝子プロモーター領域の-31とUGT1A7遺伝子の低活性ハプロタイプが肝癌と関連していることを見出した.6)376症例の輸血歴を有するC型肝炎患者につき,172遺伝子,394SNPsの解析を行い,肝癌と関連している遺伝子群を見出し,肝癌関連ハプロタイプを同定した.
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