研究概要 |
1.ヒト調節性T細胞の誘導 アロ抗原に対するCTL誘導抑制作用を持つ調節性T細胞であるCD4^+CD25^+T細胞の誘導にはアロ抗原刺激に加えてTGF-β(transforming growth factor-β)の添加が重要であることを確認し,更に種々の調節性T細胞誘導への関与が報告されているIL-4,IL-10などのサイトカインとTGF-βとの比較検討を行った。IL-10の添加ではむしろCD4^+CD25^+T細胞は減少し,さらにTGF-βとIL-10を同時に加えた場合,TGF-βの作用を低下させた。他のサイトカインの検討でもTGF-βと同様の効果や,同時に加えた場合の作用増強などは確認されなかった。また,未熟な樹状細胞を用いた調節性T細胞誘導については,これまでのところTGF-βに認められたような効果は確認できなかった。 2.マウス調節性T細胞の誘導 マウスCD4陽性細胞を用いたアロ抗原に対する調節性T細胞の誘導には,アロ抗原刺激に加えてTGF-βとIL-2の添加が有用であることを確認し,マウスにおいてはTGF-βとIL-2により誘導したCD4^+CD25^+T細胞を用い,皮膚移植の実験系における細胞移入による免疫寛容誘導を今後も継続して検討したいと考えている。 3.ヒト肝臓内調節性T細胞の解析 生体肝移植の際に摘出された肝臓を用いて検討を行なったところ,肝組織中は末梢血中よりもCD4^+CD25^+T細胞の陽性率は低く,各種疾患においても正常ドナー肝組織と比較して有意な変化に乏しかった。しかし肝細胞癌症例の腫瘍周囲には有意な増加が認められ,in vitroにおけるT細胞増殖反応の抑制作用も確認された。肝臓内の陽性率は低いものの,肝臓内でも調節性T細胞がT細胞応答の抑制に関与しうることが示唆される結果であり,月標とする肝移植時の免疫寛容誘導についての検討を今後も続けたい。
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