研究概要 |
肝不全患者の再生医療としての肝細胞/肝幹細胞移植療法の開発が望まれている。今回私どもは、in vitroの実験系で骨髄細胞から肝細胞系細胞への分化誘導法について検討した。(方法)(1)6-10週のマウス大腿骨から骨髄細胞を採取した。分化誘導因子としてHGF, EGF, HB-EGF, bFGF, FGF-4,BMP-4,OSMをそれぞれ20ng/ml添加し6日間3次元コラーゲン培養した。培養した骨髄細胞からRNA精製した後、RT-PCR法にてalbumin、CK-18、CK-19、α1-AT、G6Pase、TAT、HNF1α、HNF3α、HNF3β、HNF4α、GATA4、GATA6の遺伝子発現を検討した。(2)また、免疫染色にてalbuminならびにCK18蛋白の発現についても検討した。(結果)1)HGF, EGF, HB-EGF, bFGF, FGF-4,BMP-4,OSMの添加にてalbuminの遺伝子発現を認めた。この誘導に関しては、特にbFGFとHGFにおいて強い誘導がみられた。また、bFGFの添加により肝細胞に発現しているマーカー遺伝子やHNFsやGATA familyなどの転写因子の誘導も確認できた。2)albuminならびにCK18は、免疫染色により蛋白発現も確認できた。これらの結果より、骨髄細胞肝細胞系細胞への分化誘導にFGFやHGFシグナルが重要な働きを担っている可能性が考えられた。(結論)今回、3次元培養系において骨髄細胞から肝細胞系細胞への分化誘導が確認できた。肝細胞系細胞への分化誘導には、bFGF, HGFなどのサイトカインの働きが重要であると考えられた。これらの結果か現在、bFGFやHGFで刺激し肝細胞系細胞へ分化誘導した骨髄細胞の肝臓への移植実験を進めている。
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