研究概要 |
TRAILは,FasやTNFホモロジー解析から同定された新しい腫瘍壊死因子である.TRAILは,そのレセプターであるKILLER/DR5やDR介して,腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することが知られており,特に正常細胞への影響が少ないことから,癌治療への期待が持たれている.しかし,一部の癌細胞においては既に耐性が生じていることから,その克服が重要となっている.そこで,本研究では,その耐性機構を明らかにし治療への応用を検討した.まず最初に,癌細胞に対するTRAILの効果を検討したところ,TRAILに非常に感受性のある細胞(HCT116,SW480)と耐性の細胞(SKOV3,HS27)が認められた.これらの細胞における遺伝子profileをレトロウイルスライブラリーならびにDNA chipで検討したところ,FLIPの発現がTRAIL耐性に関与していることが判明した.現在,残り2つのクローンの遺伝子を解析し新たな耐性分子を解析中である.また,逆に感受性のある細胞HCT116では,KILLER/DR5の発現が亢進していた.そこで,まずFLIPの発現を抑制する目的でsiRNAをSKOV3細胞に導入し,TRAILの効果を検討したところ感受性が高まったことからFLIPの発現抑制は耐性克服に有用であることが示唆された.一方,TRAILシグナルを伝達するDR5受容体は,p53の標的遺伝子であることが示されている.そこで,DR5受容体の発現増強がTRAIL感受性を増強するか否か,耐性を克服する可能性があるか否か検討した.すでに,我々はアデノウイルスによる野生型p53の強制発現がTRAILの感受性を増強することを見いだしている.そこで,今回癌細胞の多くが変異型p53を発現していることに着目し,変異型p53を野生型に改変する修飾剤CP31398を使用したところ,DR5の発現は増強し更にTRAILの感受性は高まった.以上のことから,DR5の発現増強を介してTRAIL耐性の克服が可能であることが示唆された.今後,同薬剤やsiRNAを用いたTRAILとのcombination therapyが期待される.
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