研究概要 |
【背景・目的】NF-κBは炎症,細胞分化,腫瘍増殖アポトーシスに関連した転写因子である.NF-κBの活性化にはIκBリン酸化酵素(以下IKK)によりIκBが部位特異的にリン酸化されることが必須であるがIKKの活性化のメカニズムは未だ明らかではない.近年Tojima, Y Nakanishi, MらによってIKKをリン酸化し活性化するリン酸化酵素NAKが報告された.今回,NAKの活性化制御を明らかにする目的で,NAK結合蛋白質の同定を試み,新規遺伝子を同定しNAP1(NAK Associated Protein 1)と命名し,機能解析を行った. 【結果】NAP1cDNAは392アミノ酸をコードしており,既存のタンパク質ではTANKと約30%の相同性を有した.NAP1mRNAはユビキタスに発現しており,特に,肝臓,膵臓,精巣に高い発現を認めた.内因性NAP1の局在はNAKと同様細胞質であった.NAP1タンパク質はin vitro, in vivoで高率にNAKと結合しており,結合部位は158から270のアミノ酸であった.NAP1の強発現でNF-κBの活性は上昇した.また細胞外からの刺激では,TNF-α,PMAによる刺激で上昇したNF-κBの活性を増強した.NAKノックアウトマウスの解析から,NAKのNF-κBに対する直接作用が示唆されたため,NAK/NAP1複合体によるNF-κBのリン酸化を検討した.NAKはNF-κBのサブユニットであるp65を強くリン酸化し,そのリン酸化部位は転写活性に必須であるTAドメイン内にある536番目のセリン残基であった.NAP1の発現抑制により生理的作用を検討した.NAP1を発現抑制した群ではTNF-α,PMAによるNF-κBの活性が抑制された.さらに,TNF-α刺激によるアポトーシスが増強した. 【結論】NAP1の新規同定と機能解析を行った.NAP1はNAKと複合体を形成しTNF-α,PMAによるNF-κBの活性化に必須の制御因子であると考えられた.特にNF-κBの抗アポトーシス効果に重要であると考えられた.
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