研究概要 |
申請者らは,平成14年度にUbi-IR300を用いて,Octanoyl-1,3-disterin-octanoic-1-^<13>C投与後のラットの呼気の^<13>CO_2/^<12>CO_2比を測定することに成功した.しかしながら,20,30週齢WBN/Kobラットにおいて同週齢Wistarラットに比較して^<13>CO_2/^<12>CO_2比が低下していない結果となり,さらに,確実に膵外分泌障害を有する40週齢WBN/Kobラットにおいても差を認めないことが判明したセクレチンを負荷することで感度・特異度を向上させることも考えたが,基礎分泌状態で差がないことから判断して負荷テストの施行を見合わせていたところ,申請者らは,lisinopril(ACE-I)含有水を10週齢WBN/Kobラットに10週間飲用させることで膵の慢性炎症・線維化が用量依存性に抑制されることを見い出し,研究内容を変更した.Lisinoprilの膵炎・線維化の抑制機序として,TGF-β1抑制を介した膵星細包の活性化抑制が関連することも判明し,ここまでの内容を学会(2003 April. Congress of American Gastroenterological Association)ならびに論文(Gastroenterology 2003;14:1010-1019)に報告した. さらに,Renin angiotensin system(RAS)が膵炎に果たす役割は重要であると考えて研究を継続させた結果,candesartan)(ARB)の投与によってもWBN/Kobラットにおける膵の慢性炎症・線維化が用量依存性に抑制されることを示し,学会(2003 April, Congress of American Gastroenterological Association)ならびに論文(J Pharmacol Exp Ther 307;17-23,2003.)報告した. 申請者らは,降圧剤として広く安全性の認められている両薬剤を慢性膵炎患者さんへ投与することも予定したが,現状の用量は臨床使用量の数十倍であり,有効用量を減弱できないかと考え,低用量の両者併用療法を施行した.その結果有効用量を劇的に低下させることに成功した現在,慢性膵炎患者さんへ併用療法を予定しており,高血圧の治療として用いられている用量で慢性膵炎の進行を抑制できるのではないかと期待している.
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