研究概要 |
1.ラミブジンは抗ウイルス効果に優れ,副作用も少なく,経口で投与も簡便な薬剤である.しかし,一方で長期投与による耐性ウイルスの出現や投与中止による肝炎の再燃といった問題が明らかになっている.そこで我々は耐性ウイルスの早期発見と出現機構の解明のために高感度な耐性ウイルス検出系を開発し,耐性ウイルスが治療開始前の早期より存在しうることを証明した.これらの結果より特に若年者においてはラミブジンの投与期間を短期間にして耐性ウイルスの出現を予防する必要があり,ラミブジンとインターフェロンの併用投与などの検討を要する. 2.近年,HBV遺伝子組み込みが,肝癌組織においてhTERT遺伝子のプロモーター領域にみられた例が複数施設から報告されるなど,多段階発癌の重要な1ステップであることが判明しつつある.従来,HBV組み込みによるinsertional mutagenesisは,主に肝細胞癌で解析されてきたが,我々が開発したHBV-Alu PCR法を用いると急性肝炎,慢性肝炎の段階で,組み込みの解析が可能であり,肝発癌に先行する早い時期でのウイルスによる遺伝子変化を知ることができる.そこで我々は6例の慢性肝炎組織よりviral-host junctionをクローニングし,1)B型肝炎ウイルスの組み込みは慢性肝炎の段階から存在すること,2)従来,ランダムと思われていたHBV組み込みが3番染色体に有意に多く見られ,HBV組み込みが何らかのselectionを受けていること,3)組み込みにより修飾される遺伝子には癌抑制遺伝子やショウジョウバエの発生に重要な遺伝子のhuman homologueが見つかることを明らかにした.これらのデータから慢性肝炎の段階において既にHBV組み込みが宿主遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
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