研究概要 |
部分切除肝や障害肝の再生過程では,類洞は再構築ないし毛細血管化するが,その際には内皮細胞とそのpericyteである星細胞の相互作用が重要である。一般の血管は内皮細胞と平滑筋細胞から構成されるが,両細胞の相互作用にはアンギオポエチン1,-2とその受容体であるTie-2が関与している。肝においても同様の調節機構が存在する可能性を,ラットモデルを用いて検討した。 正常ラットの肝から単離した星細胞,類洞内皮細胞及びKupffer細胞は,アンギオポエチン-1及び-2のmRNAを発現していた。一方,Tie-2のmRNA発現は,星細胞と類洞内皮細胞にのみ観察された。ラットの肝を部分切除すると類洞は168時間後までに再構築され,一方,四塩化炭素を投与すると,12〜72時間後にかけて壊死巣内に毛細血管が出現した。何れのモデルもこれらの時期に一致して,肝におけるアンギオポエチン-1,アンギオポエチン-2及びTie-2のmRNA発現が高度となった。また,四塩化炭素障害肝より単離した活性化星細胞もTie-2 mRNAを発現しており,同細胞及び活性化macrophageにおける両アンギオポエチンのmRNA発現は,正常肝の星細胞やKupffer細胞より高度であった。免疫組織染色による検討でも,部分切除肝および障害肝ではそれぞれ類洞と毛細血管に一致して,両アンギオポエチンとTie-2の染色性が増強していた。 以上の成績から,肝では類洞ないし血管内皮細胞と星細胞の間に,アンギオポエチン・Tie受容体を介する相互作用の系が存在すると考えられた。部分切除肝および障害肝では両アンギオポエチンとTie受容体の発現が増強していることから,この系を介して類洞の再構築や毛細血管化は進行すると考えられた。
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