研究概要 |
我々は、Reg 1-αが障害腸粘膜の再生治癒に重要な分子である事を示した。今回、大腸上皮培養細胞(HT-29)を用いて、アポトーシス誘導刺激に対するReg 1-αの作用、およびReg 1-αのレセプターとして同定されたEXTL-3の炎症部大腸粘膜上皮における発現を検討した。方法として、1nM,10nMの組み換え型Reg1α蛋白存在下、非存在下に3mM過酸化水素水添加条件でHT-29を培養し、アポトーシスを起こした細胞の割合、およびCaspase-3活性を測定した。UC炎症部、非炎症部および正常の大腸生検材料より上皮を剥離しRNAを抽出し、real-time PCR法にてEXTL-3mRNA量を定量した。結果、過酸化水素水添加によるHT-29のアポトーシス誘導は、1nM,10nMのrh Reg1α存在下で非存在下と比較し約50%抑制され、Caspas-3活性も約50%抑制された。EXTL3/GAPDH比の平均値はUC炎症部の上皮で0.19,UC非炎症部の上皮で0.21,正常上皮で0.53であり、UC炎症部の上皮では、12例中4例でEXTL-3mRNAは検出感度以下であった。以上、Reg1αは、大腸上皮細胞に対する抗アポトーシス作用により、炎症部大腸粘膜の損傷治癒に重要な役割を果たし、UC炎症部の上皮再生障害にReg1α-EXTL糸の異常が関与している可能性が示唆された。また、最近、Reg1-αが癌抑制遺伝子であるとする報告が散見される。そこで、慢性炎症を素地とした発癌過程(colitic cancer)においてReg 1-αが癌抑制遺伝子として機能しているか否かをReg 1-αノックアウトマウスを用いて検討した。BALB/Cマウス(Ct)とReg 1-αノックアウトマウス(KO)で3% Dextran sodium sulphate(DSS)飲水1W後、1W休薬のサイクルを3クールにて慢性腸炎モデルを作製し、前癌病変とされるaberrant crypt foci(ACF)の数を比較検討した。全結腸当たりのACF数は、Ct:2.6±1.2(mean±S.D.)に対してKO:5.2±2.3(mean±S.D.)であった。さらに、DSS飲水1W後、2W休薬のサイクルを9クールにて大腸発癌モデルを作製し、検討した。Low Grade Dysplasin, High Grade Dysplasia, Carcinomaは、Ct群でそれぞれ、36%,16%,8%みられたのに対して、KO群では14%,26%,32%みられ、Reg 1-αが慢性炎症を素地とした発癌過程において、癌抑制遺伝子として働いている事が示された。
|