研究概要 |
平成14年度、15年度をかけて人の脳における情報処理能力の解析を行った。方法はコンピュータで制御された高頻度刺激を末梢神経に与え,それに対応する体性感覚誘発脳反応を解析してゆくものである.平成14年度では主に高頻度の外部刺激による脳の誘発電位の基礎的知見から,脳の時間分解能力を反映する成分を抽出し,その選択的記録方法を確立した(Hoshiyama et al.Clinical Neurophysiology,2002)。高頻度刺激に関する体性感覚刺激により、視床から大脳皮質への投射による情報伝達がどのくらい高速に行われるのかを解析するものであり、ヒトの脳では約1000Hzの刺激頻度に大脳処理は追随することができることが明らかになった。この時間的情報処理能力は、体性感覚においては時間識別覚に反映されると考えた。平成15年度には、時間識別覚に関する病態を明らかにするため、体部位各所の時間識別能力とその加齢変化について研究し成果を得た(Hoshiyama et al.Muscle and Nerve, in press)。この情報処理の時間分解能力は他の感覚においても脳の機能を決定する重要な要素と考え、平成15年度は視覚について極めて高速で刺激を与えその情報処理過程を解析した(Hoshiyama et al.Neuroscience Research,2003)。視覚でも体性感覚でも非常に高速な頻度で与えられた刺激は自覚されないままに脳で処理されるが、自覚の無い刺激によってもその後の感覚処理などは影響を受けると考えられ、これらのsubliminalな刺激はヒトの意識や行動の決定に重要な役割を持つと考えられた。 研究期間での成果は、英文国際雑誌に発表したほか、国際臨床神経生理学会(サンフランシスコ市)および第33回日本臨床神経生理学会学術大会(旭川市)で発表し国内外の関心を得た。
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