研究概要 |
平成14年度は、自己免疫性疾患の病態を形成する浸潤細胞の遊走をmediateするchemokineの立揚から炎症性筋疾患の病態立機序を把握することを目的として検討を行った。 正常筋組織中では、chemokineの発現はほとんどみられない。自己免疫性筋疾患である多発筋炎(PM)と皮膚筋炎(DM)の筋組織中のchemokineの発現を比較してみると、DM筋組織の血管周囲ではMCP-1,MIP-1βが、間質ではMCP-1,MIP-1β,RANTES, IP-10がPM筋組織の対応する部位に比較し有意(p<0.05)に増大していた。またそれぞれの該当する部位では各chemokineに対応する受容体(CCL-2,CCL-4,CCL-5,CXCR-3)を発現している単核球が集簇しており、これらchmokineがDM病態形成に重要な役割を担っていることが示された。 平成15年度は、chemokine受容体を中心に検討を行った。chemokineの受容体のなかで、ある特定のものは、特定の機能をになった細胞に発現することが知られてきている。CCR3,4は主にTh2機能の細胞に、CCR5,CXCR3は主にTh1機能を担った細胞に発現するとされている。そこでそれらの分子をmarkerとして筋組織内のTh1/Th2 balanceを探り、病態との関係をみてみると、PM筋組織ではTh2へ、DM筋組織ではTh1へ全体として傾いていることが示された。さらに、部位別に検討してみると、DM筋組織では、一様にTh1 shiftが生じていたが、PM筋組織では、筋束内ではTh2 shiftが不完全であった。これはPMにおける治療反応性がDMに比較して弱い可能性を示唆しており、今後この点から検討する予定である。
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