研究概要 |
ケモカインIP-10,Mig, I-Tacには、T細胞に特異的な遊走活性と血管新生抑制因子としての活性がある。本研究ではIP-10の役割に関して動脈硬化モデルマウスを用いた研究、IP-10,Mig, I-Tacの発現制御に関して培養血管内皮細胞を用いた研究を行った。 高コレステロール食で飼育したApoE欠損マウスで、大動脈弁上部の粥状動脈硬化進行性病変内に新生血管は殆ど検出されなかった。IP-10に対するモノクローナル抗体(anti-IP-10)を作成し、マウスに腹腔内投与しIP-10の抑制実験を行った。粥状動脈硬化進行性病変を有するマウスにanti-IP-10を投与したが、進行性病変内に血管新生はみられなかった。またPBS投与群(対照)とanti-IP-10投与群の間で進行性病変のサイズに差はなかった。一方、粥状動脈硬化初期病巣形成へのanti-IP-10の効果はPBS投与群に比べanti-IP-10投与群で初期病変のサイズは統計的に有意ではないが減少する傾向がみられた。IP-10単独の抑制では、血管新生、進行性病変の形成に影響はなく、Mig, I-Tacが代償的に働く可能性も示唆された。IP-10は初期病巣から発現しており初期病巣の形成に役割を果たしていることが示唆されたが、対象数を増やして検討する必要がある。 さらに培養血管内皮細胞で活性リン脂質リゾフォスファチジルコリン(LPC)によるIP-10,Mig, I-Tacの遺伝子発現制御に関する研究を行った。LPCは、IFN-γによるIP-10,Mig, I-Tac mRNAの発現を、mRNAの安定性を減少し分解を促進することにより抑制することが明らかになった。
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