研究概要 |
・ヒト末梢血液単核球からの平滑筋様細胞前駆細胞の分離・培養法の確立とそのphenotype解析 献血の際に得られるbuffy coatから遠心分離により単核球分画(PBMC)を分離し、更に密度勾配によってd<1.073のLow-density PBMCを再分離した。このPBMC分画をPDGF-BBとb-FGFにて培養する事で血管平滑筋の基本的マーカーであるα-smooth muscle actin (α-SMA)を発現する大型紡錘形細胞; smooth muscle-like cells (SMLC)の培養が確立された。血液単核球分画の中に血管平滑筋様細胞へ分化する前駆細胞が存在する可能性が示され、α-SMAの発現を末梢単核球にて検討した結果、PBMC分画においてα-SMA発現細胞を認め血管平滑筋様細胞へ分化する前駆細胞分画と考えられた。FlowcytometryにてCD表面抗原とα-SMAに対する抗体を用いた検討から、α-SMA陽性末梢単核球は、CD3(-),CD34(-),CD13(+),CD14(+),CD45(+),CD105(+)であった。FACSV antageにてCD14-CD105 double positive細胞をsortingし分離培養したところSMLCが培養された.ヒト末梢血中-血管平滑筋前駆細胞表面マーカーはCD14-CD105 double positiveと考えられた。この血球由来-血管平滑筋様細胞のphenotypeを検討するためにRT-PCRにより炎症性遺伝子の発現を検討したところ、interferon-γを発現する事が明らかとなった。動脈硬化病変内膜に存在する未分化血管平滑筋細胞の特殊分画としてinterferon-γを発現する血管平滑筋が認められる事より、血球由来-血管平滑筋様細胞はこの特殊血管平滑筋細胞の前駆細胞である可能性が示唆された。血球由来-血管平滑筋様細胞は動脈硬化症を初めとした種々の炎症性疾患の病態に関与する可能性が示された。 ・ヒト末梢血液単核球由来平滑筋様細胞前駆細胞のヒト冠動脈疾患、血管疾患に於ける役割の解析 冠動脈疾患患者と健常者において末梢血液を採血しその単核球分画(PBMC)を分離し、in vitroにて培養し出現する血管平滑筋様細胞の割合を検討したところ、冠動脈疾患患者において多く出現することが確認された。また、末梢血液中の白血球数と単核球分画中CD14-CD105 double positive-PBMC細胞数を直接比較検討したところ、白血球数には差がなかったが、CD14-CD105 double positive-PBMCは冠動脈疾患患者における有意な増加が認められた。
|