研究概要 |
剖検例を用いた免疫組織学的検討より,ステント挿入後の新生内膜増殖と細胞周期関連蛋白の発現を検討した.対象は27例,36ステント.男14,女13例,平均年令74.4才,心臓死19例,非心臓死8例である.植え込みより死亡までの期間は0〜235(平均63.7)日であった.Hematoxylin-Eosin等の一般染色に加え,抗cyclin D1,Cdk4,p16,p21,p27抗体を用いた免疫染色を施行し,細胞周期関連蛋白の発現を検討した.また,血管平滑筋の同定のため抗α-SMA抗体,増殖型平滑筋同定のため抗C-fms抗体を用いた.症例をステント植え込みから死亡までの日数で0〜14日,15〜60日,60日以降の3群に分け比較検討した. ステント植え込み後早期ではステントワイヤー周囲に血栓を認め,c-fms陽性の増殖型平滑筋が同部位に発現したが,60日以降には減弱した.α-SMA陽性の収縮型平滑筋細胞は15日以降に増加した.細胞周期関連蛋白では,G1-S期移行に重要な役割をもつcyclin D1はステント挿入後早期より新生内膜に発現したが60日以降でその発現は減弱した.それに対しcyclin D1-Cdk4 complexを抑制するp27は,植え込み後15日から60日までの間発現が減弱していた.p16,p21の発現はステント植え込み後の変動を認めなかった.細胞周期関連蛋白ではp27がCdkIの中でも特に血管平滑筋細胞の増殖に関連して変動し,14日から60日にかけて発現の低下を認めた.近年,再狭窄予防のためsirolimus等の細胞周期関連蛋白に影響を与える薬剤をcoatingしたステントが注目されているが,本研究の結果でもp27のdownregulationやcyclic D1のupregulationを制御することが再狭窄予防に有効である可能性が考えられた.
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