研究概要 |
心不全(CHF)患者の末血中tumor necrosis factor(TNF)-α濃度は健常人に比して有意に上昇しており,その値はNYHA分類と良い相関関係がある。一方,動物実験よりTNF-α自身が心機能を悪化させる。C-reactive protein(CRP)は急性炎症等で上昇する急性反応性蛋白であるが,冠動脈粥腫・単球内にも存在し,単球上にTNF-αを誘発するため,CRPはCHFの発症に直接関与している可能性がある。最近高脂血症患者にスタチンが用いられるが,スタチンはTNF-α濃度を低下させるため,CHFを改善させる可能性がある。対象と方法:健常者(18例),CHF患者(52例,EF;26%)より単核球を抽出。CHF患者において,高脂血症の有無によりスタチン投与群(S群;n=26),スタチン非投与群(N群;n=26)の2群に分類。両群間で,EF, BNP値,CRP(25μg/ml)刺激時における単球の産生するTNF-α値をスタチン投与前,投与6ヶ月後にELISA法にて測定。心事故(心不全悪化による再入院,心不全死)の有無を検討。結果:1)CRP刺激時に,CHF患者単球の産生するTNF-α値は,健常人に比して高値(p<0.01)。2)スタチン投与6ヶ月後,単球の産生するサイトカイン,BNP値はS群では減少したが,N群で変化なし。3)スタチン投与6ヶ月後,S群のEFは有意に改善,N群は変化なし。4)平均2.4年の経過観察中,N群の心事故は12例に対し,S群で6例のみ(p=0.03)。総括;スタチンは,心不全患者の単球の産生する炎症性サイトカインの発現を抑制し,心事故を減少させる。
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