研究課題
基盤研究(C)
本研究においては、(1)培養細胞を対象に超音波造影剤を併用した超音波遺伝子導入法に関し種々の照射条件について検討を行った。その結果、投与する遺伝子量・使用する超音波造影剤が発生する微小気泡量・超音波照射反復回数・音響出力に比例して導入効率は増加するが同時に細胞死も増加することが判明した。(2)かかる結果が生体内においても同様に成立するかにつき、ラットを用いてビボの検討を行った。サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター領域を有するプラスミド(pALTER-MAX, Promega)に組み込んだレポーター遺伝子(luciferase)を超音波造影剤とともに、麻酔下にラット左心室内に挿入したカテーテル先端より注入し、ラット前胸部より超音波照射を行った。最大音圧にてわずかな発現を左心室前壁に認めたのみであった。luciferase発現量としては培養血管内皮細胞にて発現したレベルを越えなかった。また超音波照射の届きにくい側壁・後壁における発現は皆無であった。以上より生体内カテーテル注入法による心筋特異的遺伝子発現は可能であるものの現状では低レベルである。(3)末梢静脈からの遺伝子製剤静注+超音波照射による心臓特異的遺伝子導入法の検討を行ったが、心臓側壁・後壁はもちろん前壁においても遺伝子発現は皆無であった。わずかに肝臓の左葉にluciferase発現量が確認された。遺伝子のほとんどが肝臓などの網内系にトラップされてしまい、臨床反用可能な安全域内の周波数と音圧では高速で血流が通り抜ける心くう中においてキャビテーションによる心筋への遺伝子導入は期待できなかった。(4)次の研究ステージにおいては、1)目的導入細胞に遺伝子をターゲッティングする手法、具体的にはプロモーター領域の改良、2)血管内皮を越えて背後にある心筋に到達するだけの浸透力を有する遺伝子導入用の超音波造影剤の開発が必要であることが示唆された。
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