研究概要 |
我々は日本人におけるCharcot-Marie-Tooth(CMT)病1型の遺伝学的な背景を明らかにするために,CMT病1型と診断された143例中,CMT1A重複およびPMP22,P0,Cx32,EGR2の変異を認めなかった66例を対象とし,劣性遺伝CMT病の病因遺伝子であるGDAP1,MTMR2,PRXについて変異の有無を検索した.ゲノムDNAより各エクソン部分をPCRで増幅後,Denaturing High Performance Liquid Chromatography(DHPLC)により変異の有無をスクリーニングし,塩基配列を決定した.LITAF, GDAP1については,変異を検出しなかった.MTMR2に関しては,既報の変異であるA602Gのヘテロ接合体を1例に検出した.他方のアリルに異常は検出されなかった.既報の症例とは,病型が異なり,変異と臨床型の関係が注目される.PRXでは,R1070Xのホモ接合体3症例を,R542Q+P655L変異のヘテロ接合体1症例検出した。PRXでは6種の変異のみ報告されており,日本人では頻度が高い可能性がある. 末梢神経ではナトリウムチャンネルNav1.6が跳躍伝導を司っている.ヒトNav1.6cDNAを単独およびAnkyrin Gやナトリウムチャネルβ1サブユニットと培養細胞に発現させ,パッチクランプ法を用いて検討した.結果は,Nav1.6遺伝子単独発現により顕著な持続性内向き電流を認め,Ankyrin Gとの共発現により持続性電流は著減し、不活性化曲線がシフトした.即ちAnkyrin Gにより不活性化のゲーティングが変化することが示された.Nav1.6はランビエ絞輪においては,Ankyrin Gと複合体を形成し,持続性電流が抑制され,興奮を速く伝導するための必要な機構として作用していることが考えられ,CMT病との関連が注目される.
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