研究概要 |
日本人先天性ネフローゼ症候群(CNS)患者における,NPHS1・NPHS2・ACTN4・WT1変異の役割を明らかにするために13家系の13例を対象として,末梢血白血球から抽出したgenomic DNAを用いてPCR-Direct Sequence法により遺伝子変異を検索した。 【結果】 1.13例中2例(症例1、2)に,CNSの原因となるNPHS1変異,ホモ接合体を検出した。症例1はフィンランド型で,これまでに報告のないネフリン遺伝子変異ホモ接合体を示し,exon7にストップコドンを生じるナンセンス変異E246Xであった。症例2は,exon16の2156番目の塩基Tから8塩基が欠損し,ストップコドンTGAが生じるフレームシフト変異2156_2163delであった。 2.13例中2例(症例3,4)に,NPHS1のミスセンス変異,ヘテロ接合体を検出した。症例3は,460番目のアミノ酸アルギニンがグルタミンに変化する,ミスセンス変異(R460Q)を示した。症例4は,105番目のアミノ酸アスパラギン酸がアスパラギンに変化するミスセンス変異(D105N)を示した。 3.13例中1例(症例5)に,CNSの原因となるNPHS2変異,ホモ接合体を検出した。これはexon5にストップコドンを生じるナンセンス変異(R196X)であった。 4.症例6に,症例5と同じNPHS2のナンセンス変異,ヘテロ接合体を検出した。 5.13例においてACTN4変異とWT1変異を検出しなかった。 【結論】 1.欧米症例と異なり日本人CNS患者においてNPHS1変異の原因頻度は低い。 2.日本人CNS患者においてもNPHS2変異は原因となる。 3.日本人CNS患者においてもNPHS1とNPHS2の両遺伝子の検索を行うことは重要である。
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