研究概要 |
本研究で用いた細胞及びDNAは患児の両親の承諾を得て採取、解析を行った。 レトロウイルスライブラリーを用いたMosaic variegated aneuploidy type 1A(MVA1A)原因遺伝子のの相補性クローニングは結局うまくいかなかった。1次スクリーニングでは16の候補遺伝子を得たが、2次スクリーニングでは何れの遺伝子もMVA1A細胞の有糸分裂異常を正常化させることはできなかった。原因はいくつか考えられるが、Monastrolを用いたセレクションの不確実さと、ライブラリー品質の悪さによると考えている。 一方、並行して行ったMVA1Aの有糸分裂制御機熊の詳細な解析からは、次の2つの新しい知見が得られた。1.紡錘糸形成チェックポイントは正常に機能しているが一過性であること(オーバーライドしてしまう)。2.紡錘糸形成チェックポイントが機能している時点で、姉妹染色分体の分離が起きている。以上の結果からMVA1Aの病態は紡錘糸形成チェックポイント機能そのものの異常ではなく、セントロメア及び動原体の機能異常であることがわかった。 この結果を元に、セントロメア/動原体機能に関与することが知られている遺伝子群(CENP-A,CENP-C,HP-1β,Ndc80,Nuf2,AuroraB,Survivin,INCENPなど)の変異解析を行ったが現在までに責任変異を同定することはできていない。現在はセントロメア/動原体機能に関与する下等動物遺伝子のヒト相同遺伝子を網羅的にクローーニングし、RNAiを用いて機能解析を行うと同時に、患者細胞に対する相補性の検討を行っている。
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