研究概要 |
ヒト臍帯動脈から酵素処理により血管平滑筋細胞を作成し低酸素,高酸素での差電流から酸素感受性イオンチャネルを推定する手法を用いた.着目したイオン電流はCa電流とK電流である. 1.臍帯動脈から分離した単一平滑筋細胞を用いてパッチクランプ法(全細胞型)を応用し,血管の収縮に重要な役割を果たすCa電流とK電流の酸素感受性を調べた. 2.まずCa電流であるが,電流が小さく評価困難なためCaチャネルを通過するイオンとして30mMBa^<2+>を用いた.外液に100%N_2をバブリング還流液から100%O_2をバブリングした還流液に変えてもBa電流は変化しなかった. 3.続いてK電流の酸素感受性を調べた.外液を100%N_2バブリング還流液から100%O_2バブリング還流液にかえたところ,外向き電流が減少した.この差電流はATP感受性Kチャネル阻害剤であるグリベンクラマイドほぼ完全に抑制され,臍帯動脈に存在する酸素感受性イオンチャネルにATP感受性Kチャネルが含まれている可能性が示唆された. 以上のようにヒト臍帯動脈血管平滑筋を用い,その酸素感受性につき検討した結果,ATP感受性Kチャネルが重要な役割を演じている可能性が示唆された.今後さらに研究を継続し,血管の収縮に貢献するNa-Ca交換輸送に酸素感受性が存在するか否かについても検討を加えていきたい.
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