研究概要 |
T細胞は抗原レセプター(TCR)を構成する鎖によって,αβ型とγδ型とに分けられる.マウス表皮にはγδT細胞に属するdendritic epidermal T cell(DETC)が存在する.その成熟分化の過程に関しては不明な点が多い.zeta-chain associated protein(ZAP)-70はTCRζ鎖に会合するチロシンキナーゼで,T細胞活性化シグナルの伝達物質である.申請者が作製したZAP-70欠損マウスの解析結果から,同分子がαβT細胞の成熟分化と選択に必須であることが判明している(Negishi I., et al. Nature 376:435-438,1995).本研究では,マウスDETCの成熟分化におけるZAP-70の働きを探求するためにZAP-70欠損マウスのDETCについて解析した. H14年度は免疫組織染色とフローサイトメトリーにより,形態学的な観察を行った.その結果,ZAP-70欠損マウスの皮膚ではDETC数の減少と樹枝状突起の短小化,DETC表面のγδTCR,Thy-1.2の発現量の減少が認められた. H15年度はDETCを分離し,Con Aや抗CD3抗体で刺激して増殖反応を観察した.その結果,ZAP-70^<-/->DETCでは,増殖反応が起こらなかった. 以上の結果から,ZAP-70^<-/->DETCは未熟な段階で成熟分化が停止していることが示唆された.ZAP-70はαβT細胞だけでなく,γδT細胞の成熟にも不可欠な分子であると考えられる.これらの成果は現在投稿中である(Exp Dermatol).
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