研究概要 |
薬剤性光線過敏症の機構を解明するために,キノロン系薬剤を用いて検討した.マウスに薬剤を全身投与し,皮膚にUVAを照射することにより,皮膚反応を誘導できた.ニューキノロンをマウス腹腔内に投与した場合,24時間で同薬剤の表皮中濃度は最大となり,UVAを照射するとニューキノロン光産物が表皮細胞上に形成された.すなわち薬剤は真皮側から表皮に拡散し,ケラチノサイトとランゲルハンス細胞に達し,UVA照射によりこれらの細胞は光抗原を担うことになる.このうちランゲルハンス細胞がT細胞の感作・惹起を導くことを明らかにし,薬剤性光線過敏症においても光接触皮膚炎と同様にランゲルハンス細胞は抗原提示細胞の役割を担っていることを示した.T細胞の活性化により皮膚炎が起るが,薬剤で光修飾されたケラチノサイトも標的細胞となり,種々の組織型を呈すると考えられる. アレルギー性光接触皮膚炎と薬剤性光線過敏症は共に外来性光ハプテン投与によって起こる疾患であるが,その投与経路は異なる.光接触皮膚炎では経皮的であり,薬剤性光線過敏症では経口的すなわち全身投与である.皮膚にUVが当たり表皮細胞が光ハプテン化され,その過敏症の誘導にLCが関与するのは共通であろう.しかし,光接触皮膚炎の組織学的反応は湿疹型であるが,薬剤性光線過敏症のそれは多様であり,苔癬型組織反応をとることもしばしばである.光ハプテンの表皮への到達は,光接触皮膚炎の場合は角層側からであり,薬剤性光線過敏症では基底層側からである.したがって表皮細胞の光ハプテン化の分布には両者間で差が生じることになる.こうした分布差が組織反応の違いを生ずる可能性があるため,これについても検討した.キノロン全身投与したマウスの皮膚にUVAを照射し,その組織をみたところ,瀕回の投与照射処理により苔癬型組織反応を得ることができた.これはCD8陽性T細胞のキノロン修飾された表皮細胞への攻撃によるものと考えられた.
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