研究概要 |
T細胞を基盤とするメラノーマ免疫療法における問題点として免疫エスケープ現象が注目を集めている。その原因の1つとして研究代表者はメラノーマ細胞におけるHLA Class I発現低下が重要であることを指摘してきた。一方、HLA Class I発現低下は理論的にはNK細胞の活性化につながるが、実際NK細胞浸潤を見る事は稀である。つまりメラノーマはNK細胞に対してもエスケープ機構を有していると考えられる。最近クローニングされたNKG2DはNK細胞活性化レセプターであり、そのリガンドであるMHC class I chain-related molecule-A,-B(MICA, MICB)はNK細胞浸潤い重要であると考えられる。代表研究者はMICA, MICBに焦点を当てモノクローナル抗体を用いて研究を行い次の点を明らかにした。 1)16種の培養メラノーマ細胞のうち10種がMICA陽性であった。 2)色素細胞母斑、原発・転移メラノーマ組織におけるMICA発現は表皮内メラノーマ細胞は陰性、原発巣の水平増殖相では30%、同垂直増殖相60%、転移巣では20%であった。陽性所見は細胞質および細胞膜であった。 しかし、MICAに対する抗体はパラフィン包埋切片とは反応しないため、レトロスペクティブな症例に対して検討が困難であった。そこでパラフィン包埋切片でも染色可能な抗体のスクリーニングを行なった。マイクロウエーブ前処置を行なう事でパラフィン包埋切片と反応する抗MICB抗体を得た。Preliminaryデータではあるが、MICB陽性メラノーマ病変にはNK細胞浸潤が見られる傾向があった。現在、色素細胞母斑、原発・転移メラノーマ組織におけるMICBの発現とNK細胞浸潤との関連やHLA Class I発現、T細胞浸潤との関連性を解析中である。
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