研究概要 |
変異型プリオン(PrP)蛋白の蓄積によって生じるプリオン病の伝播経路には不明な点が追い。本疾患の伝播経路として脾臓の樹状細胞(DC)がPrP伝播に関与していることが報告されており、濾胞樹状細胞の関与が注目されている。また近皮膚の掻破後に出現した症例が海外で報告されており、PrPを介する経路として皮膚におけるDCの関与も推測されている。申請者はこれまで皮膚樹状細胞であり、外来抗原を皮膚から所属リンパ節でT細胞に伝播するランゲルハンス細胞(LC)に注目してきた。本細胞(LC)が正常プリオン蛋白(PrPc)を有することを明らかにしてきた。本疾患におけるPr発現機序を解明した報告は少なく、これらの解析が病態の解明にも重要であると考えられる。そこでLCに対するサイトカインの影響について検討し、さらにFclgG受容体発現に対するPrP蛋白の影響についても検討した。この結果、(1)IL-1β、TNF-α(10ng/ml)はLCの接着分子CD40,CD80,CD86発現を有意に増加させた。(2)IL-1β、TNF-α(10ng/ml)刺激下に24,48時間培養したLCで、正常型PrP蛋白発現が有意に増加し、これらのサイトカインの刺激によってLCのPrPの発現が顕著に変化することが明らかとなった。(3)さらにリコンビナントPrP蛋白((1)μg/ml)で刺激した場合、24時間後にLCのCD40,CD80発現は有意に増加し、接着分子発現の増加を認めた。(4)PrP蛋白によるLCのFclgG受容体発現には変化を認めなかった。(4)またPrP遺伝子欠損マウスでは皮膚LCの正常PrP発現が抑制されることを確認し、さらにThy-1陽性樹状表皮T細胞(DETC)はPrPcを恒常的に発現しているが、PrP遺伝子欠損マウスではDETCの発現は認められず、またprimary cytokineによっても変動を受けなかった。以上の結果は、PrP蛋白がLC細胞膜に発現して織、LCの接着分子を介した抗原提示能に変化を与える可能性が明らかとなった。この結果はPrP伝伝播経路のなかでLCの機能変化が重要である可能性を示唆しており、今後本疾患におけるPrPの機能を解析する上で重要であると考えられた。
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