研究概要 |
放射光を用いた経静脈冠動脈造影法の検討を進め,さらにこの造影法によって運動前と運動直後の冠動脈造影を行い,運動に伴う冠動脈形態の変化について観察した。平成14年度〜16年度にわたり,16例の患者において経静脈冠動脈造影を行った。うち協力の得られた6例では,運動前と運動直後に経静脈冠動脈造影を行った。今回の結果から,放射光を用いた経静脈冠動脈造影は右冠動脈,左冠動脈前下行枝の起始部から比較的末梢まで冠動脈を十分描出でき,冠動脈の狭窄病変を評価し得ることを明らかにした。しかし,左冠動脈回旋枝については,近位部の評価は可能であったが,回旋枝の中位部から末梢にかけては左室の造影像と重なりが生じ,十分な評価は困難であった。また,経静脈冠動脈造影は簡便性・安全性に優れており,運動直後の呼吸,心拍の増加している状態でも安全に造影することができた。運動直後の冠動脈造影では,右冠動脈の描出に良好であり,全例で運動に伴う冠動脈径の評価が可能であった。運動前ならびに運動直後の冠動脈径の検討から,運動中に心電図でST下降を示し,かつ冠動脈に有意狭窄のない患者において,運動に伴う冠動脈径の変化はわずかであり,心電図のST下降は冠動脈径の変化によるものではないことを観察した。運動に伴う冠動脈径の変化は少ないと考えられた。左冠動脈については右冠動脈に比べ径が細く分枝も多いため,運動後の冠動脈径の計測が困難な例も存在した。より画像精度に優れる撮像システムを用いる必要があると考えられた。そこで,平成16年度はデジタル撮像装置であるフラットパネルの導入を進めた。患者に使用するに至らなかったが,放射光照射装置とフラットパネルとの応答性ならびに照射線量と解像度の評価などを行った。フラットパネルを導入することでダイナミックレンジの大きいデジタル画像を得ることができ,画像処理も容易となるため経静脈冠動脈造影の画質を改善できることを確認した。
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