研究概要 |
生体顕微鏡での肝および腫瘍血流を観察するための基礎実験としての門脈末梢枝閉塞における肝類洞血流の変化を蛍光色素注入下の生体顕微鏡下に観察し以下の結果を得た.側副血行路は3種に分類できた.すなわち,終末枝周辺の肝類洞を介するもの(1),同一終末門脈枝の隣接する分枝から類洞を介するもの(2),隣接する異なった終末門脈枝から類洞を介するもの(3),の3種類である.これらの類洞を介する側副血行路は速やかに形成され塞栓部位末梢の終末門脈枝の血行が再建された.マウス実験的転移性肝癌で発生初期における微小循環の解析を行った。形成初期には門脈枝を通じて腫瘍が栄養されるのが観察された。さらに成長した段階では、腫瘍内に拡張した類洞が見られないもの、腫瘍内に拡張・変形した類洞が存在するもの、腫瘍周辺に拡張・変形した類洞がみられるもの、の3種類の形態が観察された。同様の観察を,ウイスター系ラットにn-nitrosomorpholineで誘発した原発性肝癌,境界病変で比較検討した.境界病変から肝癌への進展に伴って類洞が変形・拡張し,不整な腫瘍内血洞へと変化することが明らかとなった.血流方向,周辺類洞との関連など解析事項が多く現在研究が進行中である.これらの実験に加えて,functional CTを用いたマウス腫瘍血管新生評価を行った.また臨床例でsingle-level dynamic CT during hepatic arteriograpy像と組織像の対比から転移性肝癌の微小循環を明らかにし,生体顕微鏡観察との比較を行った.また実験的研究と並行して肝硬変の多段階発癌に伴う肝細胞性結節の予後と血流の関連を明らかにした.
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