研究概要 |
放射線治療分野においても急速な技術革新が行われ,線量評価もさらに複雑となり高精度化が要求されている。その中で,二次元の線量分布評価を行う線量計の一つとしてRadiochromic filmが開発され,目されている。測定誤差においては,Gafchromic film自体がもつ濃度不均一性が直接関与し,さらに,濃度測定器の構造やその光源特性においては,Gafchromic filmと濃度測定器とのマッチングの問題も指摘されている。そこで,本研究は,Gafchromic filmの濃度測定における精度について調べるとともに照射前の光学濃度(初期濃度)が照射後の濃度に与える影響についての解析を行い,その補正方法を検討した。 まず,X線フィルム測定用Laser Densitometer Model 1710 (Computerized Medical Systems社製)とGafchromic film MD-55-2(ISP TECHNOLOGIES社製)の構成からなる線量測定系を対象に,吸収線量1〜60Gyにおける濃度測定精度の確認や濃度データの二次元画像化によるアーチファクトの有無の観察を行った。その結果,3D-CRTやIMRTにおける複雑な線量分布評価を行うなど,高精細のピクセルレベルでの測定精度が求められる場合は,二重露光技術に代表されるような濃度不均一性の補正過程をさらに加える必要があると考えられた。 さらに,Gafchromic filmの照射前の光学濃度(初期濃度)が照射後の濃度に与える影響についての解析を行い,その補正方法を検討した。その結果,Gafchromic filmの吸収線量の測定精度を向上させるために,誤差の原因の一つとして挙げられる照射前のフィルムの濃度(ピクセル値)に着目し,照射前後の試料ピクセル値の関係を調べると,照射前の試料ピクセル値が高くなるにしたがい,照射後の試料ピクセル値も高くなることがわかった。さらに,両者間の関係を直線近似できたことから,各照射前の試料ピクセル値ごとにピクセル値-吸収線量変換曲線を作成し照射後の試料ピクセル値を補正する方法を採用した。この方法により,従来の濃度-吸収線量変換曲線のみで行う測定より精度に高い測定結果を得ることができた。
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