研究概要 |
【はじめに】平成16年度は15年度に引き続き,注意欠陥多動性障害(ADHD)・反抗挑戦性障害(ODD)の脳の形態異常をVoxel-based morphometly(VBM)を用いて比較検討した。【対象】対象は,DSM-IVに基づき,ADHDと診断された男児5名,女児1名,計6名(ADHD群)とADHDにODDが併存した男児6名(併存群)である。この2群に年齢をマッチさせた男児14名,女児4名,計18名を対照群として設定した。全例右利きであり,3群の周産期障害の有無,保護者の社会経済的状況には差違がなかった。【方法】対象および対照に対して,1.5TのSiemens社製MRIスキャナを用いて全脳の三次元撮像を行い,Statistical parametric mapping 99によるVBMを施行した。統計的検討は全脳容積を共変量とするANCOVA法を用いた。同時にADHDの程度を計るADHD-RS, ODDの程度を計るODD-scale, ECBIおよびODBIを施行した。【結果】1.群間解析(1)ADHD群と対照群との比較で,ADHD群は右の紡錘状回,前頭眼窩部,尾状核において容積減少を認めた。(2)併存群と対照群との比較で,併存群は右の紡錘状回,前頭眼窩部,小脳虫部,上側頭回において容積減少を認めた。(3)ADHD群と併存群の比較では,有意差をもった容積の差異は認められなかった。2.相関解析(1)ADHD群+併存群におけて,ADHD-RSの得点が高いほど後帯状回で容積減少を認めた。(2)ADHD群+併存群におけて,ODD-scaleの得点が高いほど右の上側頭回の容積減少を認めた。【考察】併存群において有意に容積減少が認められた,小脳虫部を除く右の紡錘状回,前頭眼窩部,および上側頭回は,社会的認知に関与すると言われている。今回の結果は,ADHDにODDが併存する過程に,社会的認知の障害が重大な影響を与えている事を示唆していた。
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