研究概要 |
ストレス性精神障害の病態形成に関連するストレス性の細胞変性の機序に、c-Jun N-terminal kinases (JNKs)/c-Jun情報系がどのように関与しているかを明らかにする目的から、拘束ストレス・母子分離(NI)ストレスを用いて研究を行った。 1)JNKs/c-Jun axis情報系及びJIPs発現に及ぼす急性・慢性拘束ストレスの影響の検討 急性・慢性拘束ストレスによるラット大脳皮質前頭部(FC)・海馬(HP)でのJNK1,JNK2,JIP-1b,JIP-2a発現や機能の変動をreal-time PCR法やWestern blot法で解析した結果、急性拘束30分の時点でのみFCのJNKリン酸化の有意な減少がみられた。急性拘束によるFCでのJNKsリン酸化の減少によって、JNKsの基質であるc-Junのリン酸化には有意な影響はなかったが、ATF-2リン酸化はFCで有意に減少していた。免疫染色法からphospho-ATF-2の減少は、FC全層のニューロンにみられた。ただし、長時間拘束や慢性拘束によってもFCでATF-2リン酸化の減少がみられたが、この機序にはJNKsやp38の機能低下ではなくprotein phosphatasesの活性の亢進が関与していると考えられた。 2)母子分離ストレスによるJNKs/c-JUN axis情報系の変化 NIストレス(PN2-9,1h/day)負荷を受けたラットの成熟期での、JNK1,JNK2発現やリン酸化をreal-time PCR法やWestern blot法を用いて検討したが、有意な変化はなかった。NIラットの成熟期拘束ストレス(2h)時に、HPでのJNK1,JNK2発現やリン酸化の有意な減少みられた。JNK活性の減少に伴う情報系の変化を解明する目的で、NI+拘束ストレスによるHPのc-Jun, ATF-2リン酸化の変動を計測した。その結果、c-Jun ser73のリン酸化の有意な減少がみられた。 本研究の成果は、拘束ストレスによるATF-2機能低下を介する機序が大脳皮質前頭部の、母子分離後の拘束ストレスによるJNK2/c-Jun axisの機能低下が海馬の神経変性に関与する可能性を示していると思われる。
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