研究に使用する死後脳組織の収集状況 当教室での死後脳バンク活動により統合失調症18例の脳が収集された。さらに本年度にはシドニー大学病理学教室より正常対照、疾患脳各10例の提供がなされた。 検索された脳部位 本年度は前頭前野(ブロードマン9野)と海馬の検索を行った。 Rapid Golgiを用いた形態計測 ヒト脳後頭葉を用いてRapid Golgi法によって神経細胞の全体像を染色する試みを行った。染色後の神経細胞樹状突起を画像データとして取り込み、三次元構築を行った。これに対して樹状突起の複雑さの解析をフラクタル理論によって行い、その妥当性を検証することができた。しかし、Golgi法の染色性に変動性が大きいため、実際の解析には至っていない。今後、染色法の改良に取り組む予定である。 CgAに対する免疫染色 今年度は、既に免疫染色を行ったコホートに加えて正常対照脳と統合失調症各10例を加えて検討を行い、前頭前野の各層におけるCgAの免疫染色性の低下を再確認している。CgBに対するポリクローナル抗体を用いてフォルマリン固定材料から免疫組織染色を行ったが、検出感度を超えたシグナルは同定されていない。今後、CgCについても検索する予定である。 hNP22に対する免疫染色 アクチン結合蛋白質であることが推測される新規にクローニングされた遺伝子、hNP22に対する免疫染色を行い、統合失調症海馬CA3領域におけるタンパク発現の減少を明らかにした。同領域でのシナプス後部の機能構造異常を示唆する所見であり、検索部位を増やして調査を進める予定である。
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