研究概要 |
探索眼球運動を指標とした統合失調症のゲノム・スキャンの結果に基づいて,22q11.2領域近傍における統合失調症と関連する遺伝子の同定を試みた。統合失調症発端者48名とその親族113名について,22q11.2-12.1の領域のbeta-adrenergic receptor kinase 2(ADRBK2)遺伝子と22q11.21の領域のpeptidylpropyl isomerase(cyclophilin)-like 2(PPIL2)遺伝子の変異検索を行い1家系でCys208Serの置換を伴うADRBK2のミスセンス変異を見出した。しかし,ADRBK2,PPIL2ともに統合失調症との関連を示唆する結果は得られなかった。 また,少なくとも1名の統合失調症患者を含む68家系274名について以下の遺伝子解析を行った。短腕末端から15.967Mb〜16.063Mb,16.129Mb〜16.527Mb,16.989Mb〜17.101Mbの3領域においてハプロタイプTDTにより統合失調症と関連が示唆された。この研究の過程でPRODH遺伝子を含む約100kbの欠失を持つ1家系を検出した。22q12.3領域では約20kb間隔の多型による連鎖不平衡(LD)の解析の結果,RBM9遺伝子のプロモーターから第3エクソンまでに大きいLDブロックが認められ,また,APOL4遺伝子で小さなLDブロック,APOL3とMYH9に弱いLDブロックが見られた。この領域の関連解析の結果,APOL1〜L4遺伝子のセントロメア側のD22S278及びその付近のSNPとテロメア側のD22S283で関連が見られた。D22S278はRBM9(RNA binding motif protein 9)遺伝子の第1イントロンに存在するため,この遺伝子の第1,2エクソン及びその上流約1.2kbについて変異検索を行い,約1.2kb上流と第1イントロンに1つずつ多型を検出した。この多型のTDTの結果,SNP4,D22S278およびD22S283で統合失調症と関連が示唆された。以上をまとめると,22q11.2領域ではSTRPを新たに検出して統合失調症との連鎖不平衡を行い,3領域において統合失調症との関連を検出した。PRODH遺伝子の欠失は統合失調症のリスクを大きく高めることはないことが判明した。22q12.3領域ではAPOL1,L2,L3,L4遺伝子の近傍の多型と統合失調症とが関連すると考えられた。
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