研究概要 |
サルを用いた学習実験:慢性課題遂行中に前頭葉領域におけるドーパミンとグルタミン酸量の間の負の相関が観測された。この負の相関の機構を前頭葉領域と他の皮質あるいは基底核間の回路網、あるいは前頭葉内での神経終末間の相互作用による物と仮定し無麻酔安静拘束下でリバースダイアリシス法(マイクロダイアリシスプローブを用いた薬物投与法)とダイアリシスによる神経伝達物質測定を併用し神経伝達物質間の相互作用がどのような神経回路によるのかを調べた。 1)ドーパミン投与によるアミノ酸放出量の変化 ドーパミン(1mM)の投与によりグルタミン酸量の有意な減少が観測された。さらにD1(SKF38393,1mM)とD2(Quinurolane,1mM)の同時投与によりドーパミン投与と同様の有意なグルタミン酸の減少が観察された。 2)ドーパミンD1/D2アゴニストによるアミノ酸放出量の変化 D1(SKF38393;0.0,0.5,1.0mM)およびD2(Quinurolane,0.0,0.5,1.0mM)アゴニストの単独投与によりD1では投与量依存性のゆっくりとしたグルタミン酸レベルの増加がD2投与では減少が観測された。 3)GABA併用によるアミノ酸放出量の変化 GABA (Musimol,0.5mM)投与によりグルタミン酸レベルはわずかに減少した。さらにD1アゴニストをGABAとともに投与するとD1単独で見られたアミノ酸増加は抑えられた。一方、D2アゴニストによる減少はGABAの同時投与によっても影響を受けなかった。 以上の結果から、D1受容体は前頭葉のターゲット細胞あるいは周辺グリア細胞上にありグルタミン酸放出を増加させる方向に、D2受容体はグルタミン酸神経終末にあり直接に、あるいはトリアッドを介してグルタミン酸の神経終末からの放出を抑制しているのではないかと考えられる。 ドーパミン関連パエル受容体ノックアウトおよびトランスジェニックマウスの行動実験:DBH導入ラットの学習行動への影響が予想より顕著でないため上記遺伝子導入マウスでの実験を追加した。マウスの行動および神経伝達物質への作用、加齢に伴う変化などが観察されたがさらに継続実験中である。
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