研究概要 |
1.ウイルスが関与する血液造血器腫瘍は数多く知られている。膿胸関連リンパ腫にはほぼ全例Epstein-Barrウイルス(EBV)が感染している。しかし、このリンパ腫細胞におけるEBVの感染形態様式は明らかにされていなかった。本研究でEBVがリンパ腫細胞の染色体に組み込まれて存在し得ることを見い出し、さらに細胞株の樹立に成功した。EBVが組み込まれた染色体には染色体不安定性が起きていることが示唆され、このことが腫瘍化の一因と考えられた(Br.J.Haematol.,117:546,2002)。 2.EBV : EBVは胃癌の約5-15%において感染が認められることが報告されている。我々は胃癌と成人T細胞性白血病/リンパ腫を同時に発症した症例で、双方の組織にEBVの存在を確認した。このような報告はこれまでになく、EBVによるリンパ系腫瘍と固形腫瘍双方のpathogenesisを考える上で貴重であった(Am.J.Med.114:509,2003)。また赤芽球ろうの発症あるいはその病態の修飾にEBV活性化の関与が示唆され、報告した。(Int.J.Hematol.77:354,2003) 3.ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6):HHV-6と成人発症スチル病の関与ついて初めて報告した(Am.J.Med.113:532,2002)。またHIV陰性悪性リンパ腫患者に発生した進行性多巣性白質脳症の病変部にHHV-6のゲノムを確認し、その関与を報告した。 4.ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8):最近HHV-8が米国の原発性肺高血圧症(PPH)患者の肺組織から高率に検出されたとの報告がなされた。しかし検索した限り我が国のPPHにHHV-8は検出されず、PPHの発症や病態にHHV-8関与の可能性は少ないことを報告した(Res.Med.98:1231,2004)。 5.米国で悪性リンパ腫の発症にsimian virus 40(SV-40)が関与していると報告された。そこで我が国のリンパ増殖性疾患におけるSV-40陽性率を検討した結果1.7%であった。我が国のリンパ増殖性疾患におけるSV-40の関与は少ないものと考えられた(Bri.J.Haematol.,121:190,2003)。
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