研究概要 |
ビタミンK2(以下VK2)とビタミンD3(以下D3)との併用によりin vitroにおいて白血病細胞の分化が極めて強力に誘導される。また,この分化誘導に連動して,細胞はVK2を含めた種々のアポトーシス誘導に対して抵抗性を獲得する。一方,VK2とD3製剤の併用は骨髄異形成症候群(以下MDS)における不応性貧血患者の血球減少にも有効であることが報告されている。不応性貧血における血球減少はアポトーシスを介した無効造血に起因しておりin vitroで観察された現象と合致している。この観点よりその分子機構の解明を試みた。 HL-60細胞をVK2とD3同時添加で単球系へと分化誘導させると,p21CIP1が核内から原形質へと細胞内局在の大きな変化を認め,かつ,アポトーシス・シグナル上,JNKの上流に位置するASK-1との分子間会合によりそのキナーゼ活性を抑制することが示唆された。p21CIP1の局在変化は,分化に連動したアポトーシスの回避機構に関与していると考えられる。(投稿準備中) また,HL-60細胞を用いてコントロール,VK2単独およびVK2+D3併用処理を行い,RNAを抽出後cDNA microarray(a la carte array Human Type-I:NovusGene社:1600個のoligonucleotide probeが固相化)を用いた遺伝子発現を検討した。3群間比較でのclustering解析の結果,8グループの遺伝子発現パターン変化を示す遺伝子群が認められ,アポトーシス関連遺伝子群と細胞周囲関連遺伝子ならびに増殖関導遺伝子群間で遺伝子発現における拮抗関係を認めた。(投稿準備中) MDSの病態を反映した実験動物モデルは,病態解析や治療法の開発において極めて有用であり,予てから切望されていたが,適切なものが無かった。今回の研究分担者の久末正晴らは,Feline leukemia virus(以下FeLV)を生後3ヶ月齢未満に感染させたネコでは70%〜100%の確率で終生ウイルス血症が持続し,極めて高頻度でヒトのMDSと酷似した病態を形成することを報告した。本実験モデルを用いて,VK2のMDSに対する有効性を検証する実験を行った。VK2投与群では非投与群に比較して,白血化の抑制ならびに生存期間の延長が観察された。現在動物数を増やし継続中である。
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