研究概要 |
本研究は、動物実験として5/6腎摘モデルなどの腎障害モデルを用いてLOX-1の発現を調べ、細胞レベルでは主として血管内皮細胞を用いて、LOX-1の発現機序および酸化ストレスとの関連を検討することを目的とした。 まずIn vivo studyでは、Dahl食塩感受性ラットの成績(J Am Soc Nephrol,2000)を踏まえ、標準的な慢性腎不全のモデルである5/6腎摘ラットの残存腎におけるLOX-1の発現と局在を調べた。その結果、LOX-1発現が肥大した残存腎において著明に亢進していること、発現は、糸球体に腎臓の間質の細胞を中心に見られること、また、これらの発現がアンジオテンシンII(AngII)受容体拮抗薬の投与により減弱すること等を見出した(Hypertens Res,2003)。その後の検討では、組織のAngII濃度も上昇していることが示され、培養細胞でAngIIがLOX-1の発現を刺激することと併せて、組織におけるレニン・アンジオテンシン系が腎臓間質におけるLOX-1の増加に関与している可能性が高いと考えられた。 In vitro studyでは、過酸化水素、xanthine+xanthine oxidaseなどの酸化ストレスが血管内皮細胞におけるLOX-1発現を刺激することを報告した(Biophy Bioch Res Com,2001)。そのほか、TGT-βおよびPDGFが著明にLOX-1の発現を刺激することを見出している。一方、AngII投与高血圧モデルにおいて、血管のLOX-1発現が亢進し、これが抗酸化薬であるSOD類似物質によって抑制されることを報告し、これらにより酸化ストレスとLOX-1との直接的関係が明らかになった。
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