研究概要 |
阻血・再還流手術前後の体温管理を厳重に行うことにより、阻血性腎不全は安定して発現するようになった。安定した阻血性急性腎不全モデルが作成されるようになったので、Sham手術、阻血後0,1,2,4時間で腎臓を摘出し、RNAを抽出した。以前からの蓄積されたデータを利用して、これらのサンプルが同様の変化を生じているかを確かめた結果CYR61やHBEGFの上昇が確認された。以前からの予備的な実験で、CYR61の重要性を発見していたため、その発現の時間的な変化と部位的な点、尿中での検出について以前からの共同研究者たちと検討し、阻血性急性腎障害モデルでのCRY61を報告した。CYR61のmRNAは正常やSham手術の腎臓ではノーザンブロット法では検出されないが、阻血後の再還流2時間の腎で強く発現した。障害のない他の臓器には検出されず、障害臓器に特異的であった。CYR61蛋白は障害の後4〜24時間強い発現が持続しており、またヘパリンビーズを利用して尿中に排泄された蛋白を検出することができた。このような特性からCYR61の上昇は阻血による一連の腎の変化の引き金の一つとなりうると思われ、また診断の補助としての利用が期待された。α-MSH投与によってどのような変化を生じるかについては、現在まだ検討中である。そのほかの阻血性腎障害の病態に関係する蛋白についてはHBEGFのmRNAが阻血後約8時間でおよそ100倍以上に増加していることが確認された。ただα-MSHによる腎保護作用の直接の担い手は発見できていない。
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