研究概要 |
当研究はIgA腎症の発症機構解明の一環として行なわれたもので、血清及び粘膜よりIgA1結合蛋白質(IgA1-BP)を分離し、検討を行なうことを目的とした。 (1)糖鎖不全IgA1-HPLCカラムを作成し血清からIgA1-BPを分離した。同カラムによるIgA1-BPの再クロマトにより分離の再現性が確認された。 (2)糖鎖不全IgA1カラムに結合する血清蛋白質はIgA, IgG, IgM, C3を含み、IgGはIgG3のサブクラスに富んでいた。またIgAの87%はIgA1であり、2量体様の凝集物に富み、糖鎖不全とジャカリン高親和性を示した。IgA1-BP中の免疫グロブリンの軽鎖はラムダ鎖に富み、これら全ての性質が沈着IgA1と一致していた。即ち、糖鎖不全IgA1カラムによる血清のロ過過程は腎糸球体のメサンギウムチャンネルを通し血清が通過する過程と類似し、同一の機構で糖鎖不全IgA1が沈着することが想定された。 (3)患者の扁桃ではIgAとIgG産生の細胞レベルでのバランスの乱れが示されている。IEFの結果扁桃IgAは血清IgAと等電点分布が異なり、シアル酸の転移を受け血清型に移行する糖鎖不全IgA1から成りっていた。扁桃抽出物中のIgA濃度も有意に高く、患者の扁桃では糖鎖不全IgAが過剰産生されていると結論された。 (4)患者では血中に糖鎖不全IgA1に対するヒンジ抗体が産生される。合成糖ペプチドプロープによる検討の結果、抗体活性に著しい性差を認め、女性で高値を示すことがわかった。 (5)ブタ胃粘膜のペプシン分解物中よりIgA1結合ペプチドを分離し検討を行なった。イオン交換、ゲルロ過、透析、電気泳動の結果、分子量が5千以下の低分子で、HPLCにより280nmに吸収を有する多数の候補ペプチドを得た。アミノ酸配列解析を行なったが試料の精製度、糖鎖の存在、ランダムな切断のためか一定の配列を得ることができなかった。
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