研究概要 |
冠動脈疾患の危険因子として高中性脂肪(TG)血症の重要性が注目されている。TGに富むリポ蛋白質(TRL)は、アポ蛋白B以外に、アポ蛋白AII,CI,CII,GIII,Eなどが様々なパターンで存在している。これらのアポ蛋白はそれぞれ固有の機能を持っており動脈硬化性を規定すると考えられる。本研究では、1)TRL分布をアポ蛋白組成ごとに評価し脂肪負荷の変化を検討し、2)安定同位体を組み込んだアミノ酸をトレーサーとしたヒトでのリポ蛋白体内代謝研究法と用いて、アポ蛋白のTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討した。アポ蛋白A-II、C-I、C-II、C-III含有VLDLは、それぞれ13%、17%、16%、43%であった。これらのアポ蛋白を含むVLDLは、コレステロール、TG含有量が多い傾向が見られた。脂肪負荷後、アポ蛋白組成の有無で増加の程度に差は認めなかった。アポ蛋白含有率からアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白EのTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討することした。Large VLDLでは、E-/C+とE+/C+の異化速度が約5pools/dayと亢進していたDense VLDL、IDLでも同様の傾向であった。LDLではE-/C-、E-/C+、E+/C+の順に異化速度が増加した。異化経路の検討では、large VLDLでは、E-/C-、E-/C+のdirect removalは低かったが、E+/C-で100%、E+/C+では70%であった。以上から、アポ蛋白A-II、C-I、C-II含有TRL粒子はいずれも20%以下でTRLの中では特殊な亜分画であった。また代謝の研究はアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白Eを同時に検討した初めての研究となった訳であるが、アポ蛋白C-IIIの存在の有無にかかわらず、アポ蛋白Eはリポ蛋白リパーゼによる水解を抑制して直接の取り込みを促進することが明らかになった。
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