研究概要 |
C57BL/6バックグラウンドのSTAT6(-/-)マウスは加齢とともに肥満を呈し,30週齢の雄性マウスは同齢同性の野生型マウスより体重が39%重く,血清レプチン濃度は5倍高値であった。また,血清コレステロール,トリグリセリドも高値を示した。45週齢では空腹時及び糖負荷後血糖値の上昇がみられた。雌性マウスも野生型より体重が重かったが,その差は雄性マウスより小さかった。糖尿病をきたしたマウスは脂肪肝を呈し,膵β細胞は脱顆粒を伴う過形成を示した。STAT6(-/-)マウスは糖尿病発症前から摂餌量が多かった。これらの成績は,STAT6が免疫反応の調節だけでなくエネルギーバランスおよび代謝調節に関与していることを示唆している。 次に,ヒトのSTAT6遺伝子の変異スクリーニングを行った。その結果,コーディング領域には変異や多型はみられなかったが,プロモータ部位に2箇所のGT反復多型を見出した(-790および-866)。BMI25未満の正常体重者105名とBMI30以上の肥満者77名についてこの遺伝子型を検討したところ,翻訳開始部位から-790の位置の多型が肥満と有意に相関し(p=0.007),GT18のアレルが肥満者で高率であった(p=0.O095)。この多型は男性において肥満と相関するが,女性では相関がみられなかった。ルシフェラーゼアッセイでは各ハプロタイプ間で活性の差は認められなかった。STAT6遺伝子は日本人男性において肥満の発症に関与する新たな候補遺伝子といえる。
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