研究概要 |
本研究の目的は,光感受性物質をレーザー光で励起させ癌細胞を傷害する癌の光線力学的療法の欠点を軽減するために、体深部の癌にも適用できるように超音波を用いて光感受性物質を励起すること、および光感受性物質を抗体を用いて癌特異的に集積させることにより,光過敏症を抑えることを動物実験レベルで確立することであった. まず抗CEA特異的マウスモノクローナル抗体(mAb)(F11-39)と光感受性物質ATX-70を,EDCとsulfo-NHSを用い結合させ,結合物F39/ATX-70を単離した.F39/ATX-70はin vitroでCEA発現癌細胞株に対して有意な細胞傷害活性増強効果を示した.またCEA発現胃癌細胞を皮下移植したヌードマウスにF39/ATX-70を静注し,腫瘍に超音波を照射した結果,超音波照射単独群に比べ腫瘍の増大が著しく抑制され,この抗体-光感受性物質結合物と超音波を併用することが癌特異的治療に有効であることが示唆された.次に臨床応用を考え,マウス抗体ではなく副作用の少ないヒト抗体と,ATX-70を改良したより効果の高い光感受性物質DCPHを使用することにした.上皮癌の多くで発現の著しい増加がみられる癌関連抗原MK-1(Ep-CAM)に対するヒトmAb(HmAb)を作製するために.組換えMK-1タンパクを調製し,ヒト抗体遺伝子導入マウスを免疫した.その脾細胞とマウスミエローマ細胞を融合させ,得られたハイブリドーマのスクリーニングにより抗MK-1 HmAbを産生するクローンを得た.しかしそれらのクローンはIgM抗体がほとんどであったので,現在免疫方法を変えてIgGクラスのHmAbを作製中である.
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