研究概要 |
抗腫瘍薬に対する癌細胞の感受性は、癌細胞の増殖状態、細胞周期により規定されており、癌細胞の細胞周期と薬剤投与のタイミングを合わせることで、副作用の少ない癌治療が期待されている。最近時計遺伝子の研究が進んできており、また、per1,per2,cry1,cry2,BMAL-1などが主な時計遺伝子として注目されており、その中でもper2が癌化と関与すると言われている。 本研究期間中の成果としては、まず最も重要と思われるper2のPAS領域およびCKI領域を中心に各種癌細胞における時計遺伝子の存在を確認した。用いた細胞は胆管癌細胞株TFK-1,HuCCT1肝癌細胞株HepG2,Hep3B, HT-17,Li-7,HuH-7,PLC/PR/5、乳癌細胞株MCF-7,MDA-MB-231を検討し、RT-PCRにおいてper2の存在およびシークエンスを確認した。 一方、遺伝子治療のためのアデノウイルスベクターに関しては、p27を発現するベクターや、187Thr変異p27ベクターを作製し、さらにp27の核外輸送に関与しp27の安定化を向上させたアデノウイルスを作製した。これらを用いて、胆管癌細胞株に対してアデノウイルスが十分感染し、遺伝子が発現することを確認するため、サーカディアンリズムと関係があると言われているCDKインヒビターp27に着目し、その変異型p27を用いて胆管癌細胞株TFK-1に対して細胞周期が停止し、アポトーシスを誘導することが明らかとなり、時計遺伝子による遺伝子治療の効果が期待できる結果となった。
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