研究分担者 |
高尾 尊身 鹿児島大学, 生命科学資源開発研究センター, 教授 (80171411)
秋山 伸一 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60117413)
米澤 傑 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10175002)
愛甲 孝 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60117471)
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研究概要 |
様々なヒト癌において,Thymidine phosphorylase(TP)の高発現例は予後不良で血行性転移と関連していることや消化器腺癌では膜結合型ムチンであるMUC1は予後不良因子であることを見出した.とくに膵癌ではTPの発現が高頻度に認められる.TPは細胞の運動性および浸潤能を亢進しapoptosisを抑制するが,TP阻害剤がTPの発現を抑えることからTPが癌細胞の浸潤・転移に深く関与していることが明らかになった.さらにTPのapoptosis回避機構にHIF-1aを介する経路が関連していることを見出した.また,ヒト癌においてムチン遺伝子の発現が生物学的悪性度に強く関連していることを報告した.さらに膵管内乳頭腫瘍におけるadenoma-carcinoma sequenceとムチン抗原の発現との関連性について新しい分類を報告した. 一方,膵癌は予後不良の癌の一つであり,根治手術後にも再発する頻度も高い.この原因を解明するために,膵癌におけるリンパ節微小転移の検討を行った.組織診断で微小転移が認められなかったpNO症例にも微小転移は認められた.膵癌では微小転移は高率に存在するが,臨床的意義については今後多数例で解析する必要がある.また,1群転移陽性例に対する3群までの郭清の意義についても今後検討が必要と考えられた. 膵癌における血管新生因子VEGF-CおよびVEGF-D抗体による免疫組織学的検討を行った.原発巣は辺縁部と中心部を観察したが,VEGF-C, VEGF-Dともに辺縁部は中心部に比べ有意に高発現を呈した.転移陽性リンパ節はVEGF-C, VEGF-D高発現例が原発巣より有意に発現が高度であった.辺縁部でVEGF-C, VEGF-D高発現群は低発現群に比べ有意に予後不良であった.膵癌原発巣周辺部のVEGF-C, VEGF-Dの発現はリンパ節転移と相関し,リンパ管新生の因子の発現は予後にも重要な因子と考えられた.今後生検標本を用いたリンパ節転移の術前予測や術後の補助療法の選択に有用になると考えられた.
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