研究概要 |
caspase-3遺伝子をpolymerase chain reaction (PCR)にて増幅されるための最適のprimer setをデザインし,健常者白血球のDNAを用いてPCRを行い,caspase-3遺伝子を得た。これを用いて定法に従いadenovirus vectorを作成した。胃癌培養細胞6株におけるcaspase-3蛋白の発現をWestern blottingにより測定したところ6株中5株でcaspase-3蛋白の発現を認めたが,KATO-III細胞においてはcaspase-3蛋白の発現をほとんど認めなかった。KATO-IIIおよびcaspase-3遺伝子導入したKATO-III/cas3に5-FUおよびcisplatin (CDDP)を1,10,100μg/mlの濃度で48時間作用させ,殺細胞効果をMTT法にて測定し,比較した。結果は、いずれもKATO-IIIに比較して有意にKATO-III/cas3に対する殺細胞効果が増強していた。以上より,胃癌に対するcaspase-3遺伝子導入と抗癌剤との併用効果が期待された。しかし,その後,このadenovirus vectorはHEK293細胞での継代中に力価が失われた。このため何度もcaspase-3導入用のadenovirus vector作成を試みた。しかし、plasmidは作成できるものの、原因は不明であるが,adenovirusに組込みHEK293細胞内で濃縮する過程で成功しなかった。また,caspase-3 plasmidを用いたHVJ-Eによるcaspase-3遺伝子治療も検討したが、in vitroの実験の結果では、有効ではないと考えられた。
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