研究概要 |
生体への侵襲刺激によって,細胞内の傷害顆粒が分泌される.傷害顆粒からは,パーフォリンが放出され,細胞膜に細孔を形成する.この細孔を通過してグランザイムBが細胞内に導入され,標的細胞をアポトーシスに誘導する.パーフォリン/グランザイムBによる一連の細胞障害機構は,細胞障害機構として注目され,敗血症性ARDSの肺胞上皮や血管内皮細胞の主要な傷害因子であることが明らかとなった.パーフォリンによる細胞膜傷害機構の精巧なin vitroモデルを開発することは,生体に加わる様々な侵襲(感染・担癌・手術侵襲)に対する生体反応の病態診断に役立つばかりでなく,過剰な生体反応に対する治療薬の開発にも役立つ.当該研究課題では生体内分子間相互作用解析装置を用いて,リン脂質膜構造を金箔膜の張られたセンサーチップ上に形成し,パーフォリンによる細胞膜傷害活性の定量的評価システムを開発し,臨床応用の可能性を検討する. 本研究課題では研究期間内に,以下の成果を得た. (1)パーフォリンによる細胞膜傷害活性の定量的評価システムを開発し,論文を投稿中である. (2)現在までに,特定のパーフォリンの阻害作用をもつ薬剤の特定には至っていないが,serine protease inhibitor (serpin)を有効な標的分子として解析を行った.未だ,機能的には不明な分子であるが,mammary serine protease inhibitor (maspin)がその候補として考えられ,現在dominat negativeを作製し検討中である. (3)granzyme Bの定量システムについては現在も引き続き検討中である. パーフォリンの細胞障害機構は依然不明の点もあるが,癌抑制遺伝子maspinがその阻害作用を持つ可能性が示唆された,現在詳細を検討中であるが,RNAiを用いた,急性期の炎症性疾患治療戦略の可能性が示唆された.
|