研究概要 |
悪性腫瘍の微小残存病変(minimal residual disease : MRD)の評価に,蛍光プローブを用いたreal-time quantitative PCR (RQ-PCR) assayが用いられるようになってきた.大腸癌でもCK-19やCEAの発現を定量的に評価する事で,転移の有無を予測する試みがなされている.しかし,CK 19やCEAといった標的遺伝子は,上皮系腫瘍でのみ発現している遺伝子のmRNAの発現量を定量しているため,(1)個々の腫瘍細胞での発現量の違いが結果に影響する,(2)RNAが標的であるため,サンプルの長期保存ができない,などの欠点があり正確な定量評価が行われていない可能性があった.これらの欠点を解決しMRDを正確に評価するためには,腫瘍細胞特異的な塩基配列をもとに,DNAサンプルを対象として解析しなければならない.当該研究課題ではk-rasの遺伝子変異を標的にし、定量的評価の可能なASO RQ-PCR assayを開発することを目的として研究を行い以下の成果を得た。 (1)MGB (minor groove binder)構造を有するprobeを用いて,K-ras point mutationを標的とした微小リンパ節転移の定量法を開発した.MGB probeは構造的に安定で高いTm値を有し,1塩基置換を正確に識別することが可能であり,10^<-5>個に1個の腫瘍細胞の定量が可能であった. (2)MGB probeの特性:MGB probeは3'端に結合させた場合には不安定であり,5'端に結合させた方がより正確な定量が可能であることが明らかとなった. (3)ASO RQ-PCR法を用いた定量法の基礎を確立した. (4)CEAを標的としたmRNAの定量法も同時に行い,DNAを標的とした定量法との相関を検討したが必ずしも両者はそうかんしなかった. (5)臨床例での解析は20例ほどに留まり,さらなる解析を行う必要があった. DNAを標的とした微小残存病変の評価法は,MGB技術を応用する事でその精度・感度が飛躍的に向上し,臨床応用可能な方法と考えられた.
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