研究概要 |
平成14年度は分離したブタ膵内分泌細胞の長期培養における、インスリン分泌に関わる機能について転写因子を中心に検討し、我々の培養系では、PDX-1,Beta2/NeuroD, Pax6,NKx6.6などのislet specific geneのmRNAの発現は9週程度まで維持されているのにもかかわらず、インスリン蛋白の分泌やインスリン分泌刺激応答性は先行して低下がみられ、PDX-1,Beta2/NeuroD, Pax6,NKx6.6などの転写因子による制御以外の系が示唆された(Pancreas,2003)。平成15年度はブタ膵内分泌細胞の生物学的背景や機能保持のメカニズムの情報のひとつとして、腸管ペプタイドのひとつであるGLP-1の、ブタ膵内分泌細胞のインスリン分泌、細胞増殖に及ぼす影響について検討した。GLP-1は成熟ブタ膵内分泌細胞の経時的なインスリン基礎分泌の低下を抑制し、膵内分泌細胞のPDX-1を介する細胞増殖作用が示唆された(Pancreas 2004)。また新生仔ブタの内分泌細胞から、pancreatic progenitor cellの濃縮を自的としてcell sortingを行い、SP細胞として得られた。最終年度は転写因子large mafの発現を検討し、maf familyが膵の発達、分化に深く関わることを膵虚血負荷や発達期の膵の発現を追跡することにより示した(再生医療学会2005.3月)。導管の発達分化や、インスリン以外の膵分泌ホルモンにも関わる転写因子であり、今後臨床的な重要性が考えられる。炎症、再生、発癌、発達の変化の過程と、血糖調節を介する代謝要因にリンクする転写因子であることが示唆され、炎症を基礎に発生する病態と代謝疾患の関連、膵の発癌と内分泌機構の接点などの検討を今後の課題としている。
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