研究概要 |
進行食道癌は,いまだ消化器癌の中でももっとも予後の悪い疾患の一つであり,また表在癌といえどもリンパ節転移の頻度も高く,食道癌そのものの悪性度の高さが指摘されている.よってその分子レベルでの解明は急務である。 細胞の性質は複雑なネットワークを介した多数の遺伝子によって規定されており,これら多数の遺伝子変化により癌の生物学的特性が生み出されていると考えられている。近年,多数の遺伝子変化を同時に捉え,総合的に解析するアプローチとしてcDNAアレイが導入され,遺伝子発現解析が飛躍的に進展しつつある。 今回我々は,cDNAフィルターアレイを用いて,食道癌の生物学的特性を解明しようと試み,包括的な遺伝子発現プロファイルにより,食道癌の生物学的特性を分類し臨床に応用したいと考え検討を試みた。 患者に承諾を得たうえで,食道癌の切除標本の一部を切離し,超低温で保存を行った。それらのうち病理組織検査の結果、リンパ節転移を認めた群と無かった群についてDNAアレイ解析結果を比較しリンパ節転移に関与する遺伝子群の抽出を試みた。具体的にはニューラルネットワーク解析法にて転移の有無の予測プログラムを作成しようとしている。これまでに集積した40例以上の切除標本よりRNAを抽出しDNAアレイ解析を行った。しかしながら食道癌の外科的切除では他の消化器癌と違って開胸開腹の手術が必要なことから長時間を要するため、一部の標本からは十分に検討に耐えるレベルでのRNAの抽出ができなかった。このため現時点で有意な解析結果が得られていない。RNAの抽出精度を高めるため,内視鏡による生検標本の集積を行った結果、安定した抽出が可能となっている。今後それらの生検標本を用いて予定していたDNAアレイ解析を行い,さらに予後との関係について調査する。
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