研究概要 |
グルタミン酸虚血下分節注入モデルを用いて,脊髄障害に対する、nNOS inhibitorである7-nitroindasole(7-NI)の神経保護作用をin vivoで評価した.New Zealand white rabbitを用い、A群(n=7)では,nNOS inhibitorである7-NI 25mg/kgを腹腔内に術前から手術終了まで2時間ごとに投与した.B群(n=7)はnon-selective NOS inhibitorであるN(G)-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME,25mg/kg)をA群と同様に投与した.C群(n=7)は7-NI 25mg/kgをA群と同様に投与したのちAMPA/kainate受容体阻害薬であるNBQX4.0mg/kgを静脈投与した.D群(n=7)はriluzoleを術前10日間(100mg/kg/day)経口投与させたのち、7-NI 25mg/kgをA群と投与した.E群(n=7)はcontrol群として,vehicleのみを投与した.カテーテルを右大腿動脈から腹部大動脈にむけ挿入、その先端をbifurcationから5mm上の位置に固定した。腹部大動脈を左腎静脈直下とbifurcationで血流を遮断した状態で、30mMのグルタミン酸溶液を2ml/minの速度で5分間カテーテルから注入した。手術後、神経学的所見をTarlovのmodified scoreに従い、12、24、48時間後の各時点において、評価した。Tarlov scoreは、A群で3.9±0.7,B群は1.9±0.7,C群は3.6±1.1,D群は,4.1±0.4、E群は0.9±0.7であった。A群でB群,E群より有意に良好な回復を示した(P<0.05)。病理組織学的検索では、E群では、灰白質とくにventral hornの神経細胞の脱落が著明であったが、A群,C群,D群では軽度のeosinophilic changeのみであった。グルタミン酸虚血下分節注入による脊髄障害にたいして7-NIの保護効果がin vivoで認められた。ALS治療へのnNOS inhibitorの応用,すなわち脊髄の運動神経細胞を保護し,患者の生命予後,Quality of lifeを改善することが期待される.
|