研究概要 |
段階的根治手術が予想される初回姑息手術時、10mlの骨髄細胞を完全清潔下に採取し、直ちに細胞接着蛋白でコーティングされた生分解性ポリマーの一弁つきの肺動脈弁(10X 20mm)に接着播種させ、組織培養液中に浸漬し、手術室内の細胞培養室にて約1時間37℃でインキュベートを行った。単純裁断法を用いて組織の断片化を行った。細胞培養液はRPMI(Sigma Chemicals, St.Louis, MO)及び1%GPS(29.2mg/mL L-glutamine,10,000units/mL penicillin G sodium, and 10,000g/mL streptomycin, GIBCO BRL-Life Technologies, grand island, NY) VEGF(Vascular Endothelial Cell Growth Factor) FGF(fibroblast growth factor) HGF(hepatic growth factor)を添加したDulbecco's Modified Eagle Medium(GIBCO BRL-Life Technologies, grand island, NY)を使用した。移植術後約1ヶ月後に、心臓カテーテル、造影検査、心臓超音波検査を行いフォローアップは6ヶ月毎にに心臓超音波検査を用いて形態学的検索及び組織過形成の有無等を経過観察した。術後遠隔期にも心臓超音波検査を施行した。再手術時に肺動脈弁移植部の組織片を客観的に評価した後、小組織を採取し、人工肺動脈弁組織と自己組織弁を生化学的、生力学的、免疫組織学的に比較検討した。平成14年度はおもに、ヒト細胞培養の技術的な手法を確立し、動物実験では細胞-ポリマーの人工血管移植を犬モデルにて施行した。本研究費により十分な研究成果が得られ、結果は前述の学会で発表した。さらに当科では、研究成果を基に平成11年4月には東京女子医大倫理委員会での是認も得られ、平成12年5月に臨床応用第一例目が施行され、良好な血管が得られている。今後もさらに臨床例を積み重ねて検討を加えて報告する。臨床例は現時点で43例となり、現在経過観察中であるが、経過は良好である。しかしながら、臨床での弁膜組織移植に関しては、未だ張力に問題点があり、基礎実験を継続する必要があると考える。
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